「だいぶ勘が戻ってきたな。やはり、旅は良い」
呑気なことを言いながら、戻ってくる十兵衛に太郎丸が
飛びついてきた。

「お、おじさん強ぇなぁ!凄いや!それと、そっちの爺様も」

「はは、たいした事はない。俺なんかまだまだ弱い方さ」

「もちろん、俺と俺のお父には負けるけどね」

大蛇は嫌な臭いだけを残し、すでに消え去っている。
木に突き立った槍を抜きながら又佐が言った。
「それにしても若、弱りましたな。こう毎日、敵の相手ばかり
していては前に進みませぬぞ」

十兵衛も思案顔である。
確かに、これ以上の遅れは、あまり好ましくない。
その思案顔にニヤリを微笑みが浮かんだ。
さながら、いたずらを思いついた子供のようである。

「思いついた。良いことがある。又佐、面白い物に
乗せてやろう」

「面白いもの?」

「さよう。それに乗れば、一日で江戸に着く。行くぞ」
太郎丸はすっかり十兵衛が気に入ったようだ。
側をピッタリと着いて歩きだした。
その横には韋駄天がいる。



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