さすがの毘沙門天にも焦りの色が見えてきた。
太刀筋が粗くなっていく。
まずは豆腐小僧を倒して、と思う気持ちがそうさせるのだろう。
対して、妖しのもの達は完璧に布陣を組んでいる。
豆腐小僧は輪入道が守り、火を噴いて寄せ付けない。
その隙に乗じて、河童と土蜘蛛が攻撃を仕掛けていく。

「へへ、豆腐のおかげで何とかなりそうやな」

「ああ、だがこっちも決め手に欠ける。あの刀捌き、尋常じゃない。
太刀筋が全く見えん。あれを止めんことには、わしらも勝てん」

「それについては考えがある。」

「おお珍しやな。河童に考えがあるとは」

「やかまし。ちょっと聞け」
河童が何事か囁きながら、闘いを続ける。
仲間が驚いた顔つきで、その考えに頷いた。

「よっしゃ。いくで」
一声、仲間に言い残して河童が一歩前に飛び出した。
毘沙門天を挑発しながら近づいて行く。
「はは、あんさん、人間の頃は誰かは知らんが、
なまくらもええとこやな。ちぃとも効かん。
うちの先生やったら、あっちゅう間に倒してしまいはるわ」

言いながら、毘沙門天に掴みかかる。

一閃。
チン、と刀が鞘に戻ると同時に河童の右手が落ちた。
確かに土蜘蛛が言ったように刀が見えない。
人であった頃、磨きぬいた居合抜きの技は、今や神速を超えていた。
苦痛に顔を歪めながら河童が一旦退く。
たちどころに豆腐小僧のおからがその右手を接合する。
二、三度振ると右手は元通り動き始めた。