「あのな、あの公演の終了後に連絡があったそうだよ」

その日、営業を終えた後。
熊は、ゆっくり噛み締めるように話し始めた。
あふろ君は息を詰めて熊を見つめている。

「お父さんが倒れたそうだ。それ以上のことはまだ、判らない」

「ななちゃんは…ななちゃんは、大丈夫でしょうか」

「待つしかないね…」
熊は、あふろ君の肩をポン、と軽く叩いた。
「大丈夫。絶対に帰ってくるよ。彼女のことだから
あの笑顔でね」

「はい。すんません、心配かけちゃって…」

「仕方無いだろ、あふろ君の親代わりとしてはね。
さ、今日は終わりにしよう。気をつけて帰るんだよ」
店から出た二人は、その時、流れてくる音楽に気付いた。

「熊さん。」

「あぁ、公園からだな。」

初めて見かけた夜のように、公園からジゼルが聞こえてくる。
二人は走った。
月明かりの下、妖精が踊っていた。

「ななちゃん…」

「あ、熊さん。あふろ君、おひさっ!」
妖精にしては荒っぽい。

「おひさって…」

「ただいま、熊さん、あふろ君。バイトの帰りなんだ。
しばらく動いてなかったからね、とりあえず踊りたくて」
あの笑顔が帰ってきた。

十へ