「く、くそ、この狐め」

ナツが小春を守ろうと、錦三に噛み付いたのだ。
うろたえる錦三を尻目に、小春とナツは逃げだした。
逃げる途中、小春は手拭を落としてしまった。
後に残された錦三は、腹立ち紛れにその辺りの物を
手当たり次第に壊しまわった。
さらに何とも罰当たりなことに、お稲荷様の社に小便をかけて
帰ったのだ。

その夜から錦三は高熱を出して寝込んだ。
体中が爛れたように真っ赤になり、苦しみに苦しみ抜いて
錦三は三日後の朝、死んだ。

どうやらお稲荷様の祟りではないか、と村人達は噂しあった。
年頃の娘を持つ家は、狐の嫁入りを恐れ、昼中から戸を
締め切っている。

そして四日目の夜、小春が姿を消した。

小春は、ゆっくりと目を開けた。
ぼんやりと辺りを見回す。
薄暗がりの中に、何かが沢山居るのが判った。
目を凝らしてみると、それは大勢の狐の群れだった。
中で一番立派な狐が口を開いた。