麻理が快心の笑みを浮かべた。
「ふっふっふ、さすがに効いたようね。
咽喉が焼け爛れたんじゃなぁい?
少しぐらいなら喋れても、呪文のような複雑なものは
どうかしら。
あなたが今飲んだのはねぇ、コレよ。コレ」

麻理の指先に黄色いカプセルがある。
それは、実家のおばあちゃんから送られてきた
『にんにく卵黄』であった。
志郎はキスの前にそれを口に含み、
噛み破ってからベイの咽喉に流し込んだのである。

「おばあちゃん、ありがとう!さ、これで呪文は唱えられないわよ!」

「き…さま…許…さん…」
ベイの瞳が金色に輝き始めた。
途端に麻理の瞳は焦点を失った。
ふらふらとベイに近付いて行く。

「ま、麻理ちゃん!」
必死になって志郎が立ちはだかるが、その動きは止まらない。

「そ…こを…どけ」

「麻理ちゃんっ!ごめんっ!」
志郎が麻理の頬を叩いた。
ばっちぃぃぃん、と高い音を立てて麻理の頬が鳴る。

「いったいわねぇぇ!なにすんのよこの野郎っ!」
麻理が反射的に志郎の顔面を殴った。