「だから何を頼んでも大丈夫。けど、あたしとしては
鰯のローズマリーパン粉焼きをお勧めするわね。
さ、とりあえず座って」
香映の隣に座り、藤田は改めてメニューを開いた。
店主が書いたのだろうか、達筆な文字で、呆れるほど様々な
料理が記されている。
藤田は、こっそりと香映に訊ねた。
「その鰯のローズマリーなんとやらってのは、どれだね」
「あ、メニューには載ってないの。メニューに載ってない料理の方が
多いのよ、この店。おかしな店でしょ」
まぁいいか、とメニューを置いた藤田の右後ろから、
絶妙のタイミングで麦茶が出された。
歩き回って汗ばんだ体に、冷たい麦茶が沁みていく。
「お替り、お持ちしましょうか」
これもまた優しい声がする。
振り向くと、着物姿の美しい女性が立っていた。
「いらっしゃいませ、ご注文がお決まりになりましたらお呼びくださいね」
ぼんやりと頷く藤田の目の前で、香英が面白そうに手をヒラヒラとさせる。
「綺麗な人でしょ。この店の女将のいぶさん。
あの大きな熊さんが頭上がらない、唯一の人」
頼んだ鰯のローズマリーパン粉焼きは、意外なほどあっさりとした
味わいであった。
ローズマリーの爽やかな香りが食欲を誘い、藤田は珍しく
御飯のお代わりをした。
一緒に添えられた海鮮サラダも美味い。
藤田は心底からこの店が気に入ってしまった。
どうせ、明日も明後日も、家に飯は無いのだ。
それならばいっそ、毎日この店で食べてやろう、そう考えた。
あの女将に会えるだけでも外に出る甲斐が有る、そうも考えた。
それともう一つ。
つくね亭には、藤田の家には無いものが有る。
鰯のローズマリーパン粉焼きをお勧めするわね。
さ、とりあえず座って」
香映の隣に座り、藤田は改めてメニューを開いた。
店主が書いたのだろうか、達筆な文字で、呆れるほど様々な
料理が記されている。
藤田は、こっそりと香映に訊ねた。
「その鰯のローズマリーなんとやらってのは、どれだね」
「あ、メニューには載ってないの。メニューに載ってない料理の方が
多いのよ、この店。おかしな店でしょ」
まぁいいか、とメニューを置いた藤田の右後ろから、
絶妙のタイミングで麦茶が出された。
歩き回って汗ばんだ体に、冷たい麦茶が沁みていく。
「お替り、お持ちしましょうか」
これもまた優しい声がする。
振り向くと、着物姿の美しい女性が立っていた。
「いらっしゃいませ、ご注文がお決まりになりましたらお呼びくださいね」
ぼんやりと頷く藤田の目の前で、香英が面白そうに手をヒラヒラとさせる。
「綺麗な人でしょ。この店の女将のいぶさん。
あの大きな熊さんが頭上がらない、唯一の人」
頼んだ鰯のローズマリーパン粉焼きは、意外なほどあっさりとした
味わいであった。
ローズマリーの爽やかな香りが食欲を誘い、藤田は珍しく
御飯のお代わりをした。
一緒に添えられた海鮮サラダも美味い。
藤田は心底からこの店が気に入ってしまった。
どうせ、明日も明後日も、家に飯は無いのだ。
それならばいっそ、毎日この店で食べてやろう、そう考えた。
あの女将に会えるだけでも外に出る甲斐が有る、そうも考えた。
それともう一つ。
つくね亭には、藤田の家には無いものが有る。