昼過ぎ、嫁はんからメールが入った。

『夕方な、君が感動するようなモン届けたるわ。』
ですと。

何だろうか。
この人が、ここまで言うからには、本当に感動するものに違いない。

ワクワクしながら待っていた。

そして、持ってきたのはこれ。



こ、これは天狗堂のパン?!

「そう。鰹節削りの鉋が研ぎ上がったから、
取りに行ったついでにね」

店、まだあったんか…

「しかも値段見てみ」

え。


値段変わらず!!
嬉しいなぁ…感激やなぁ

「ね♪」


もう十年以上も前の頃。
新婚の俺達は京都の西院辺りで暮らしていた。
完成したばかりのマンションに、何だか知らないけれど格安の賃貸料で
入居できたのだ。

ものすごく広いバルコニーが付いて、2LDKで8万ちょいだったかな。

そこを中心に、あちこちに足を伸ばして彷徨い歩いていた新婚時代であった。
色んな思い出があちこちに染み付いている街なのだ。

そして、俺達が愛してやまないパン、それがこの天狗堂のパンであった。
まさか、まだあったとは。

変わらないなぁ…
この素朴な姿と味。


してやったり、と俺の前で微笑む嫁はん。


あぁ、この人も変わらないや(笑

新婚当時から、その笑顔は全然変わらない。

温かい、焼きたてのパンみたいな笑顔だ。