『わたしは、失敗したようだ。
見てもいけないし、振り向いてもいけなかったのだ。
すでに妻はわたしの手で殺した。
わたしも後を追う。
この世では、最早添い遂げることはできないらしい。
妻の髪の毛だけが美しいまま残った。
その手触りが懐かしい。
わたしと同じく、黄泉比良坂を下ろうとするならば、決して振り向いてはならぬ』


結局、西川は妻を亡くした悲しみの余り、心神喪失に陥り異常な行動に出たと結論が出され、事件は幕を降ろされた。

誰も居なくなった部屋で稗田が一人、パソコンに向かっている。
何度となく、西川の声を聞き直しているのだ。

「黄泉比良坂か…」
椅子の背からジャケットを取り上げると、稗田は自分の車に乗り込んだ。
ダッシュボードに家族の写真が貼り付けてある。悲しげな一瞥をくれ、稗田は車を国道9号に向けた。


「試しにやってみるだけだ。」
家族の写真に向け、そう呟く。

車は、星上山の麓に着いた。

西川が言っていた古墳が見つからなければ帰るつもりだ。

が、それはあっさりと見つかってしまった。

中に入ると、泥土の上に西川のものと思しき足跡がついていた。

意外なほど、簡単に穴は見つかった。

八へ