事情を訊きたい一心で、私は古くからの芸人仲間や興行先を当たった。

どうにか探し出した寿子さんは、老人介護施設に居た。
ようやく話が聞けるという願いは、けれども、現場に行った時点で断たれた。

奥さんは、認知症を発症していたのだ。

ソーシャルワーカーから聞いたところによると、
幸ちゃんは甲斐甲斐しく妻の面倒を看ていたらしい。

が、時代は既に人間ポンプなどという芸を望まなくなっていた。

不幸は重なるもので、自らが胃癌を患った。

これ以上、自宅での介護は無理と判断した幸ちゃんは、全面的介護を引き受ける施設に奥さんを入居させようとした。

当然、費用は何千万円とかかる。

だが幸ちゃんは何処からか、その金を工面してきたのだ。

その手段が、覚醒剤の密輸であった。
特技を活かし、通常では考えられぬ量を運ぶのだ。

何十回となく、痛む体を騙しながら海外と日本を往復した。

そして、最後となった日。

腹の中で、覚醒剤を詰めた袋が破れ、幸ちゃんは帰らぬ人となった。


暗澹たる気持ちで話を聞き終えた私は、病院のロビーに向かった。

そこに、車椅子に乗った奥さんが居た。
恵比寿顔は変わらないが、痩せている。