薄っぺらい手帳にボタンが付いているだけの代物だ。
新手の詐欺かもしれない。

いよいよ警戒心を強める仁を見て取ったか、粗茶ノ水はテーブルに何枚かの写真を並べた。

ここ最近売り出し中の著名人ばかりだ。
音楽、絵画、陶芸と活躍する分野は異なるが、いずれもが若いのに凄まじい技術を持っている。

「こいつらもモニター中じゃ。皆、凄い技術を持っとるじゃろ?
ライフリセットボタン改良版の優れた点は、リセットしても経験は無くならんという所じゃ」
ま、要するに経験値を引き継いだまま、新たな人生をスタートできるわけで。
そう説明し終えた粗茶ノ水を仁はポカンと口を開けたまま見ている。

「どうじゃ、モニターを引き受けてはいただけませんかな」

仁は口を開けたまま、激しく頷いた。

「やる、やるやるやる!」

そうか、そういう事か。
経験を積み重ねて練習をしまくって、リセットボタンを押せばいいんだ。
そうすれば、誰よりも優れた体を持てる。
今度こそ合格だ!

仁は有頂天になり、軽やかなステップを踏みながら部屋に戻った。