ji ma maというミュージシャンがいる。
沖縄の女性だ。
彼女が歌う『大丈夫』を聴いていて、俺は昔のことを思い出した。
大丈夫。彼女は、いつもそう言って笑っていた。
俺は若い頃、ミュージシャンを志していた。
根拠の無い自信と、あてのない努力しか無かったが、それでも何とかなると思っていた。
何年も弾き続けていれば、そこそこ腕は上がるが、それは才能とは直接関係がない。
自分が他人より上手く弾けたからと言って、デビューできるとは限らない。
そんな明確な事実には目も耳も塞いでいた。
現実に凹まされた夢を酒と与多話で膨らませる毎日が延々と続く。
出口が見えない。
正しくは、希望する出口が開かない。
そんな時、一人の外国人女性に出会った。
フィリピンから来たのが丸判りの彼女は、着るというよりは布を貼り付けただけの姿で
スケベな客を惹き付けていた。
生オケと呼ばれる仕事(要するに酔っ払い相手の生バンドだ)に向かう途中に彼女はいた。
通り過ぎる男達の袖を片っ端から引っ張っていた。
とりあえずは誰でも構わないらしい。
その証拠に、彼女は俺にまで声を掛けてきたのだ。
「かんにんな、俺、今から仕事やねんか」
「シゴト?」
小首を傾げてこちらを見る姿は、まんま子猫を思わせる。
「そや。シゴト。これ判るか」