キャビンが浸水し始めた。
陸地はあと少しなんだ。
何とかしなければ。

脱出用のゴムボートで 行くしかない。
恐る恐る、ゴムボートに乗り移る。

洋子の姿は無かった。

既に船はデッキまで波に洗われていた。
ここからは自力で漕いでいかなければ。

だが、その為のオールは突然海中に消えた。
オールを持った洋子が再び現れた。

『お前も喰われろ』

そう叫びながら、洋子はボートに這い上がってくる。
意味の無い悲鳴をあげながら、俺は洋子を蹴りつけた。

洋子は構わず、俺に喰らいついてくる。
左足に激痛が走った。
洋子の口から血がしたたる。脛の肉を噛り取られた。

くそ。くそっ!

ふくらはぎ。

小指。

やめろ。

やめてくれ





「酷い被害ですね。」

「あぁ、どうやら船が浸水して逃げかけた所を鮫にやられたんだろうな。…おや?」

「どうしました?」

「女の方は確かに鮫の歯型なんだが…
男の方は…何に食われたら、これほどボロボロになるんだ?」