少年の体から、沙耶加が抜け出ようとしていた。
白い裸体が血にまみれている。
上半身が現れた。 少年はすでに動かなくなって久しい。
全てが抜け出すのに5分もかからなかった。

沙耶加は少年の腹の上に立ち、口を開けた。
その口から、大量の血液がこぼれ出す。

「おや、やはり良い蛹人だったのですね。血が余るとは。」
成加が感に耐えぬようにつぶやく。

「ごほ」
沙耶加が一つ湿った咳をした。
さきほどまでの、ただれた体は既に無い。
血でまみれてはいるが、もとの真っ白な肌を取り戻していた。

「見事な羽化でした。沙耶加。それでこそ、斉藤家の一族」

「次は真由加ですね。急がせましょう」

林田が聞けたのはそこまでだった。
いつの間にか、林田の後ろに真由加が来ていたのである。
林田の口は真由加の手でふさがれた。

「静かに。利樹君。一緒に戻って」
声を出さぬまま、こくり、と頷く林田。
来た道を戻りながら、真由加は一言も話さない。
林田に繋がれた手が終始、震えている。
外に出た頃には、すでに日が暮れかかっていた。