「待てよ、ゴリラは確か、全世界で650頭ぐらいしか
居ないんだろう?ルワンダとかコンゴとかにしか居ない筈だ。
しかも大切に守られている。見つかったらエライことだ。
大抵の場合、失敗すると聞いた事がある」

判っている、とばかりにエディは右手で木村を制した。
「だからだよ。だからこそ、賭けになるんだ。
その密輸グループのリーダーが俺の友人だ。
奴は余程の自信があるらしい。
コンゴ共和国で捕まえたゴリラをこの港で乗せかえるんだ。
うまく捕まえたら業者への連絡用に黄色い旗を
立てたまま入港する手筈になっている。
此処から見えるだろ。あの桟橋に着く。
さぁ、どっちに賭ける」

木村はしばらく考えた後、ポケットから皺だらけの10ドル紙幣を
取り出した。
「No FLAG。密猟失敗に10ドルだ」

「じゃあ俺は有る方に賭ける。10ドルは持ってないが、
代わりにこれだ。」
エディは右の中指から凝った作りの指輪を外した。
青い石が嵌っている。

「OK。じゃあ船を待とう」
窓際の席に移り、木村とエディは黙り込んだまま海を見つめた。
遠慮なくギラつく太陽が、絵の具を溶かしたように真っ青な海を
照らしている。


三へ