「イマ オワリマシタ。」

「どれどれ…なによこれ」

ジローが立っているのは、亜紀子が長い間、
丹精込めて育て上げた花壇である。
いつもなら、最初の薔薇が咲く季節だ。
けれども、そこには一輪の花も無かった。
全てジローが刈り取っていたのだ。

「こ、このバカロボット!」

「マタ ソウヤッテ オオゴエヲ ダサレル。
ジローハ シンパイデス」

「だからその顔はやめないかっ!
目玉をクルクル回すんじゃないよ。舌も出すなっ!」

「アアッ、ツエハ オヤメクダサイ。ピリピリスル。」

何をしでかすか判らないジローが気になって、
亜紀子はおちおち座っていられなくなった。
ジローに用事を言いつけると同時に、
自分もその場で仕事を指示し、手伝う。
いつの間にか、自らがパイを焼いていたりする。

「何をやってんだろうねぇ。あたしは。
これじゃあ、どっちが召使いか判りゃしないよ」

ぶつぶつ言いながら焼き上げたパイを運び、
テーブルを片付け、洗い物、洗濯と続き、
庭の手入れを終える頃には夕食の支度だ。
そんな毎日は、確実に彼女を変えていった。