「コレステロールや脂肪の高い物は皆、こうやって俺から離れて行く」
まるで磁石の同じ極を近づけたように、三谷が手を近づけた皿はスイスイと離れて行く。
結局、吉井が頼んだ皿全てが離れて行った。
とろろ蕎麦と野菜サラダは全く動こうとしない。
「最初に気付いたのは、葬儀場に置いてあった酒を飲もうとした時だ。
いやはや、びっくりしたよ。
水蒸気か何かのせいかなとも考えたが、ビールの瓶まで動いたからなぁ」
唖然とした吉井は、開いた口を閉じようともせずに、コクコクと相槌を打った。
「おかげで体重が2kg減った。体調もすこぶる良い」
なる程、痩せてみえた筈だと吉井は感心しかけて、頭を振った。
「いや待てよ。原因は何なんだよ」
「原因というか、多分な、嫁さんが邪魔してるんだろな。
生きてる頃、いつも俺の体調を心配してたから」
「なる程なぁ」
妙な事だが、吉井は心底から納得した。
「ああ美味かった。すまんが先に帰るわ。
一駅歩いて帰るんだ。
早いとこ適性体重にしなきゃ、嫁さんが成仏できない」
立ち上がった二人の目の前で、最後にもう一つ動く物があった。
それはレシートであった。
レシートは、ひらひらと吉井の前に飛んで来てピタリと止まった。
「お前が痩せるまでは、二度と食事には誘わないよ」
笑いながら言う吉井に、すまんな、と三谷が笑う。
その目に、うっすらと涙が滲むのを吉井は見逃さなかった。
まるで磁石の同じ極を近づけたように、三谷が手を近づけた皿はスイスイと離れて行く。
結局、吉井が頼んだ皿全てが離れて行った。
とろろ蕎麦と野菜サラダは全く動こうとしない。
「最初に気付いたのは、葬儀場に置いてあった酒を飲もうとした時だ。
いやはや、びっくりしたよ。
水蒸気か何かのせいかなとも考えたが、ビールの瓶まで動いたからなぁ」
唖然とした吉井は、開いた口を閉じようともせずに、コクコクと相槌を打った。
「おかげで体重が2kg減った。体調もすこぶる良い」
なる程、痩せてみえた筈だと吉井は感心しかけて、頭を振った。
「いや待てよ。原因は何なんだよ」
「原因というか、多分な、嫁さんが邪魔してるんだろな。
生きてる頃、いつも俺の体調を心配してたから」
「なる程なぁ」
妙な事だが、吉井は心底から納得した。
「ああ美味かった。すまんが先に帰るわ。
一駅歩いて帰るんだ。
早いとこ適性体重にしなきゃ、嫁さんが成仏できない」
立ち上がった二人の目の前で、最後にもう一つ動く物があった。
それはレシートであった。
レシートは、ひらひらと吉井の前に飛んで来てピタリと止まった。
「お前が痩せるまでは、二度と食事には誘わないよ」
笑いながら言う吉井に、すまんな、と三谷が笑う。
その目に、うっすらと涙が滲むのを吉井は見逃さなかった。