篠田山源三郎は、業界で神と呼ばれている。

篠田山は小学校を出てまもなく、名工とうたわれた吉野三郎丸に師事した。
厳しい修行の始まりである。

吉野は、篠田山に天賦の才を見い出し、心を鬼にして弟子を鍛えた。
篠田山もまた、師の教えに忠実によく励んだ。

材料の見極めから、道具の手入れ、一つ一つの工程を何年も何年も掛けて教えられ、或いは師の手元を見て盗んだ。

篠田山の最初の作品を見て、吉野は己の道具を封印した。

「引退する踏ん切りがついた」
完爾と笑ったという。

篠田山の最も華やかな時は、2004年10月17日に訪れた。
滋賀県草津市が、市制50周年の記念行事に彼の作品を使用したのである。

その数、3790。
見事、ギネスに登録された。

秋晴れの空の下、3790個ものブーブークッションが一斉に鳴り響く様は、この世のものとは思えなかったとギネスには記されてある。

今日もまた、篠田山は丁寧にブーブークッションを作っているのであろう。

彼の作品を一度知ってしまったら、二度と再び他のブーブークッションには手が出ない。
その円やかで品の良い、それでいてインパクトの強い音色は、まさに逸品である。

人間国宝になる日も近い。


ちなみに、草津市の話はマジである。