マンガにスパイ手帳、
ミニカー、銀玉鉄砲…

全部がその当時のまま
だった。


良太はここで、いつ
帰るか判らない私を
ずっと待っていたんだ


何年も何年も。


私は秘密基地の中を
覗いてみた。


そこにはクレヨンで
描かれた私の似顔絵と
『ごめんな』という
文字があった。


私はその時初めて、

息子の前で声をあげて
泣いてしまった。


私の涙を受けた途端、
宝物達はボロボロに
なって崩れていった。


「お父さん、壊れ
ちゃったよ?!」


「いいんだよ。これは
大好きな友達にあげた
んだ。」


私は息子の頭を撫で
ながら、そう答えた。


桜の花びらが舞う。
風の中に良太の笑い声
を聞いた気がした。