「判りました。そのグレンシールドとかいう国は、ここから遠いのですか?
今から行ってみようと思うのですが…。何かが判るとしたら、そこでしょう」

「歩いて行くには遠すぎるな。マリア、せめて送ってさしあげなさい。
村にある乗り物を使ってよい」
それ以上の話し合いは無い、とばかりに村長は二人に背を向ける。
まだ何か言おうとしていたマリアは、仕方なく引き下がった。

「村長…あの、食事ぐらいは差し上げてよろしいでしょう?」

「あぁ。それぐらいならかまわんよ」
背を向けたまま村長が答えた。
マリアがほっとした顔を見せる。
何故か、マリアはトマムという男に強く惹かれていたのだ。

重苦しい沈黙が部屋を満たした。
その沈黙が突然、破られた。
村の広場から悲鳴が聞こえたのだ。

「なんじゃ、今のは?!」
驚いて飛び出した三人がそこに見たものは、黒い毛に覆われた巨大な
獣であった。
二本の足で立ちあがると、軽く大人の背丈を越える。
太い前足には長い爪が付いている。
顔も長い毛に覆われて見えない。

村長が叫んだ。
「ありえん!何故、こんなところにアムルイがおるのだ!皆、離れよ。
闘いの魔法を使える者はおらぬのか!」

「みな、出払っております!」
村人の一人が悲痛な声をあげる。