「ほほう、さすがに我が名は存じておるか。ならば話は早い。
土方、我が軍が上洛の際、最も邪魔になるのは貴様達新撰組だ。
まあ、長州藩がどうなろうとわしが知ったことではないがな」
その声が徐々に変わっていく。奇妙なことだが、来島の体から
二人分の声が聞こえてくる。

「貴様も人では無いな」
土方が怒声を浴びせた。

「うむ。誠に惜しい。おぬしのような逸材は、贄にするには惜しいな。
どうじゃ、土方。おぬしも天海様に仕えぬか。
さようならば、この袋には入れずに済む」

言い終わると同時に、来島が懐から出したのは小さな袋である。
一振りごとにその袋は大きく膨らんでいく。
たちどころに来島の背丈よりも大きくなった。

「この袋はの、命を奪い、育て、造りだす。
何処へなと身を移すことも可能な福袋じゃ。
そしてその袋を使いこなせるのは、わし一人」
そう言いつつ来島は、するりと袋に入り込んだ。
もぞり、と一つ蠢いて、袋は来島を吐き出した。
その姿は先程までの侍の出で立ちではない。
派手な金糸をあしらった裃姿で現れた。

「この姿こそ我が本性。土方よ、お初にお目にかかる。
我が名は布袋。天海様の参謀役じゃ。
今日はおぬしたち新撰組の血肉をちょうだいに仕った」

ゆったりと微笑みながら、布袋は袋を一つ波打たせた。
「この袋を血気溢れる新撰組隊士の肉で満たす。
生きながら腐れ爛れた血肉に、我らが主、天海様を浸すのじゃ。
さすればたちどころにして、元の御立派な姿を取り戻す。
うれしかろ、この国の為に役立つのじゃからな。
さ、芹沢、沖田。さっさと片付けてしまえ」