「わたしね、一晩だけ遊びに行くつもりだったんです。
でも、もう帰る場所が無いってことに気づいた。
それを教えてくれたのが、この盛り皿なんです。」

そこまで話して、彼女は愛しげにその盛り皿を撫ぜた。
「これが出来た時、父は躍り上がって喜びました。
自慢気にわたしに見せました。
ちょうだい、ってねだると、にこにこ笑って言ったんです。
『もちろんさ。これはお前にあげる為に作ったんだ。
おまえは父さんみたいに焼き物がやりたいって言っただろ?』
頭を撫でられながら、わたしは頷きました。

『道に迷いそうな時には、この皿を見るといいよ』
そう言っていた皿が荷物の中にあったんです。
それを見つけたとき、
あぁ、もう家は無いんだ。父さんも母さんも
居ないんだ、ってハッキリと判ったんです。」

ズルズルと音がする。
熊が鼻をすすっているのだ。
ねこやが迷惑そうに熊の顔におしぼりを投げつけた。

「あ、あぁすんません。俺、その手の話に弱くて」

「弱るのはこっちの方だよ。全く。泣いた赤鬼そのまんまじゃないか。」

七へ