金ちゃんは、大家さんが目を見張るぐらい感心な働き様でございましてな。
塵も積もれば山と成る、ってぇのは本当でございます。
金ちゃん、働き続けてちょっとした商いが出来るほどの金が溜まりました。
今とは金の単位が違います。その当時で十円といえば、
かなりの金額でございます。
金ちゃん、その金を元手に商いを始めるつもりです。

その日、お幸ちゃんに会ったら夫婦になってくれと
言うつもりで出かけました。
ところがいくら待ってもお幸ちゃんは来やしません。
思い切って家まで行ってみました。
家とは言っても、今にも倒れそうな小屋でございます。

「あ、お幸ちゃん…」

声をかけるのがためらわれました。
お幸ちゃんは、見知らぬ男に連れられて家を出ようとしてます。
土間には、おとっつぁんが這って出てきております。
お幸ちゃん、涙がポロポロと後から後から湧いてはこぼれます。

「どうしたんだい、お幸ちゃん」

「なんでぇお前は。こいつぁな、借金の片に今から
吉原に身を沈めてもらう」

「なんだって!い、いったい幾らなんだい」

「ほほう、おまえさん代わりに払おうってのか。
感心だねぇ。十円ってぇ大金だ。持ってんのか?
持ってねぇなら、さっさとそこをどきな」