目覚めた時、男は真っ白な部屋の中に居た。
背中に当たる床の冷たさが、ぼんやりした頭に蹴りを入れてくる。
身震いしながら、男は、ゆっくりと体を起こした。
白い。天井も床も壁も、何もかもが真っ白だ。
そのせいだろうか、奇妙な圧迫感がある。
病室だろうか?
男は事故か何かに遭ったのだろうか。
…いや、病室では無いことは確かだ。
ベッドも無いし、用度品も無い。
何より、もう一つ重要な物が無い。

ドアが無い。
まるで箱の中に閉じ込められた虫であった。

男は立ち上がり、壁に向かった。
拳で軽く叩く。
石では無い。
木でも無い。
何かは判らないが、硬い素材だ。
部屋中の壁をくまなく探ってみたが、秘密の出入り口が隠されているわけでも無いようである。

部屋中をグルグル廻りながら、男はいつの間にか悲鳴をあげていた。

叫んでも誰かに聞こえる筈が無いと判ってはいるが、叫ばずにはいられない。

「ここはどこだ!
何だこの部屋は!
どうしてドアが無いんだ!
誰か出してくれぇぇっ!」

疲れ果てて座り込み、それでもなお悲鳴はあげていた。


悲痛なその叫び声をじっと聞く者達が居た。

ニへ