しずは、頬をほんのり染めて笑った。
「とんでもない。わたしゃ旦那一筋だよ」

しずは口を手で隠して笑った。

「それはそれはご馳走様」
美佳も微笑む。
本当に可愛らしいおばあちゃんなのだ。
自分も年老いた時には、この人のように手のかからないおばあちゃんになりたいなと、美佳はつくづく思った。

「だからもうおしまい。先に逝かれちゃったからね」

そう言って寂しげに微笑む。

(そうだ、この人は家に戻ればまた一人暮らしなんだ)

手がかからないのも当然なのだ。
誰に甘えることも出来ず、一人で暮らしている老人なのだから。

目頭が熱くなり、美佳は慌てて検温表をチェックするふりをした。

「あ、そう言えばどうしたんですか?ナースコール呼ばれたけど」

「用事は済みました。あなたに御礼を言いたかったの。それだけ」

そしてまた、深々と頭を下げた。

「いやだなぁ、吉田さん。そんなこと気にしないで、早く良くなってくださいね」

言いながら美佳は、苦しい笑顔を見せた。
あまり先が無い事は主治医から聞いている。

だが、プロである以上はそんな素振りなど出せるわけが無い。

美佳は笑顔のまま、詰め所に戻った。

四へ