B琶湖で有名なS賀県に在る『つくね食品』では、今まさに社運を賭けたプロジェクトがスタートしようとしていた。
社長のつくね氏が工場を見回し、大声を張り上げる。

「従業員諸君、私が自信を持って作り上げた野菜ジュースが、いよいよ稼動する!
全員一丸となって当たってもらいたい!」

「全員ちゅうたかて僅かに三人やがな」

「なぁ、工場ちゅうても裏のバラックやし」

従業員が、ぼそぼそと陰口を叩き合う。

「なにか言ったか」

「いえ、何でもないです」

つくね氏の機嫌を損ねるわけにはいかないのだ。
あの体で暴れられると、小さなバラックが丸ごと崩壊する恐れがある。

それに、珍しいことに今回の野菜ジュースには従業員も期待していたのだ。

巷では、野菜ジュースブームが沸き起こっていた。

今までと違うのは、機能を限定した商品が増えたことだ。

赤い野菜ジュース、黄色い野菜ジュース、紫の野菜ジュースなど、
それはもう健康マニアのハートを熱く揺さぶる商品が売れに売れていた。

つくね氏はここに注目した。

それぞれの野菜ジュースに、キーとなる野菜とフルーツがある。

紫ならば紫人参とブドウにブルーベリー。
赤ならばトマト、赤ピーマンとリンゴにアセロラ。
緑ならば、ほうれん草にグレープフルーツ。


正直、使えそうな野菜と果物は残っていない。

そこで、つくね氏は全世界を探し回った。

まだ使われていない野菜や果物は無いのか。

その結果。

ルバーブ、紫アスパラ、白オニオン、チーマデラバ、バナナピーマン、スティックセニョール、コールラビー、ファミリーセブンなどの本当に有るのかと言った食材が揃った。


これではまだ足りぬ、つくね氏は沈思黙考し、しばし周りを見渡した。

「これじゃいっ!」

つくね氏の手はフナ寿司に伸びてしまった。

「さらにフルーツはこれじゃいっ!」
あぁ、それはドリアンであった。

こうして出来上がったジュースは
『なんとも言えない色の野菜生活』
として売り出された。



今、つくね氏は行方不明である。