朋美は二階のベランダで洗濯物を干しながら、何気なく隣を見下ろした。

(まただわ…)

隣の那須さんの奥さんが、このところ毎日のようにデッキチェアーで横になっているのだ。
秋の日差しを浴びながらの昼寝は、さぞかし気持ち良いのだろうが、そろそろ肌寒く感じる日もある。

毛布を首までかけているようだが、そうまでして昼寝したいものだろうか。

高い塀に囲まれている為、奥さんの昼寝に気づいたのは朋美だけである。
最初の頃奥さんは、手を振って朋美に挨拶をしていたが、面倒になったのか近頃はそれも無い。

おそらくまた喧嘩したのだろうと朋美は決めつけた。

何しろ喧嘩が多い夫婦なのだ。
普段は穏やかな奥さんが、こと喧嘩になると般若の顔になる。

那須さんは一言も言い返さず、嵐が過ぎるのを待つ。
そう言えば、一番最後の喧嘩から数えて一週間は経つ。
きっとそれ以来、顔を合わせるのも嫌なんだわと朋美は推理した。

正直、あの甲高い怒鳴り声を聞かずに済むのは有り難い。
おそらく、近所中がそう思っているに違いなかった。

干し終わったのを待ちかねたように、下の子が泣き出した。
朋美はそのまま隣家の事を忘れた。

二へ