その夏、谷に咲いた真っ白な花を僕は永遠に忘れない。

北アイダホは時間が止まったままの場所が多い。
僕の村もその一つだ。
ペンド・オレイル湖を眼下に見下ろす山の中の
小さな小さな村、それが僕の住むウェスト・ホープ。
何も無い村だったけれど、綺麗な水と空気と森があった。
少年にはそれだけで充分だ。
僕は毎日、リスや鹿のように跳ね回って過ごした。

疲れたら森の奥に住むクリントじっちゃんの小屋に行く。
じっちゃんは、有名なホラ吹きだ。
手作りのクッキーをつまみながら、時の経つのも
忘れて、僕はじっちゃんのホラ話に夢中になった。
じっちゃんは第二次世界大戦で撃墜王だったらしい。

「その証拠にホレ、金の勲章じゃ。見るがいい」
疑う僕に見せてくれたのは、
確かに金色に光った勲章だった。
村の皆が言うには、勝手に自分で作ったらしいけど、
偽物でも本物でも僕にはどちらでも良かった。

じっちゃんの話は、とんでもなく楽しかったんだ。
じっちゃんの飼い犬、ウォルフをからかいながら僕は毎日、
空を旅し、森林を駆け抜け、海底の探検者になった。
時々出してくる日本という国の抹茶とかいう苦い飲物には
閉口したけれど。