そこには真っ暗な闇しか無い。
その暗闇の中に蠢く者の気配がする。

「ここに居るんだよ。この家の一番素敵な場所だ。
僕はね、ある日ここを見つけたんだ。
そして判った。こんなに穏やかに過ごせる場所なんて
他に無い。ここから何処にも行きたくないんだ。
だから、仕事も君も捨てることにした」

秀一は得々と話し続けた。
「この家は家族を欲しがっているんだ…
前の持ち主が一人暮しの老人だったらしい。
その人の想いがこの家に染み付いている。
僕の中にも染み付いてしまった」

秀一が壁を探っている。灯が点った。
裸電球の弱々しい光の中に、女達が浮かび上がった。

「紹介するよ、僕が連れてきた家族だ。」
三人居た。皆、異様に痩せこけている。
立ち上がる力も無いらしい。
中の一人が、這いずって恭子の方へ近づいてきた。

「いや、いやぁぁぁ!」

「怖がることはないよ、恭子。君を襲う気持ちは無い。
君はこの部屋で暮らす資格は無いんだ。
だけど、君が引っ越してしまうのは困る。
君にはいつまでもこの家に居てもらわないとね。
この家を他の人に渡すわけにはいかないからねぇ…」