「正しくは、位相を反対に繋いだスピーカー同士ですわ」

にたり。

「それがどうしたと」

巨顔に似合わぬ優雅な手つきで石渡を制すと、御厨屋は話を続けた。

「わてはその消音効果を生体エネルギーに応用させたんだす」

御厨屋は鞄からコピー紙を取り出すと、つい、と石渡の前に差し出した。何やら複雑な数式が記されてある。

「生物、いや植物もですな、生きているものは全て固有の波動を持っているんですわ。
このプログラムは、その真逆の固有波動を造り出します。
するとどうなるか」

御厨屋は市役所の天井をぐるりと見渡すと、一匹の蜘蛛を見つけた。

「あの蜘蛛を見といてんか」

プレーヤーに付属しているスイッチを調節し、スピーカーを天井に向けた。

「ぽちっとな」

再生ボタンを押したが、スピーカーからは何も聞こえてこない。

「何も起きんじゃな…」
言い終える前に、蜘蛛がぽとりと落ちてきた。
そのまま動こうとしない。

「なっ」

「お陀仏ですわ」

にたりにたりにったりにたり。
目障りなほどの笑顔だが、石渡にはそれを感じる余裕すら無い。

「凄いじゃないか」

石渡が差し出した手をぴしゃりと叩き、御厨屋は続けた。