俺は直球を投げることにした。
マスターに頼むしか手は無い。
普段の俺なら、他人事にこれほどまでに
入り込まないのだが、おかしな事も有ったものだ。
もしかすると、あの老夫婦が羨ましいのかもしれない。

俺の話を一通り聞いたマスターは、カウンターの下から
ダスターを取り出した。
何をするつもりだと見守る俺の目の前で、G-RXを磨き始めた。

「マスター…」

「せっかく人ん家にお嫁入りするんだからな、綺麗にしとかないと」

「じゃあ、マスター良いのか?店はどうすんだ」

マスターは磨きあげる手を休めようとしない。
「店は休む。ちょうど良い機会だから、嫁さんの
産まれ故郷を訪ねてくるよ」

磨き上げられたG-RXを満足気に見つめ、マスターは俺に言った。
「しばらく、お前のスープラを貸せ。それが交換条件だ。思い切り走ってくる」

「この不良爺様が」
俺は笑いながらカウンターにキーを滑らせた。

「それともう一つ」

「何だよ」

「帰ってくるまでの留守番も頼むぜ」

「さっさと行っちまえくそ親父」


九へ