カリ…カリカリ…

その音は、どうやら棺桶の方から聞こえてくるようだ。

何の音だ?
しばらく考えて俺は鳥肌がたった。

中から、爪で引っかいてるんじゃないのか…

その事を隣に座っている人に伝えようとしたが、
言葉は出なかった。
隣の男が、横目で俺を見つめていたのだ。

男だけじゃない、そこにいる者全てが俺を見ていた。

なんだ。みんな、あの音が聞こえてないのか。
何故、何もしようとしない。

葬儀屋のアナウンスが何事も無かったように
会場に響いた。
「それではご出棺でございます。故人に最後のお見送りを」

近づこうとする俺を何人かがさえぎった。
近づけない。

だが俺はその時、見てしまった。
佐々木は、棺の中でハッキリと目を開けていた。
その目が動いて、俺の目と合った。

「佐々木…」

葬儀屋が何かを佐々木に注射した。
その途端、奴の目はゆっくりと閉じていく。

「あんた、何か見たか」
いつの間にか目の前に居た坊主が、俺に言った。

「なぁ、あんた何も見てないよな?
見てないと言ってくれ。じゃないと…」

葬儀屋が後を続けて言った。

「二人も入ると、重くて棺桶持てないからねぇ…」