『ぼうや、しっかり
しろ。いいか、
わしが必ずお前を
連れて帰ってやる。
どの山じゃ、お前が
来たのは。』

大悟はゆっくりと
目を開け、震える
息の下で、北の山
とだけ言った。

北の山…あんな遠い
所から来たのか?
森爺は北の方角を
見た。
遥か遠くに霞んで
見える、一際高い
山。
あんな所から…

森爺はあらためて
大悟を見た。

何とまぁ…
足の裏はほとんど
すり切れている。
ネズミに齧られた
痕、何かにぶつかって
できた傷、体中
傷の無い場所が
無いじゃないか。

森爺はもう一度
北の山を見た。

できるのか。
わしに。この
老いさらばえた
フクロウに。

いや、やらねば
ならんのじゃ。
この子はわしに夢を
見ることを思い
出させてくれた。

その子の夢をここで
断つ事はできん。

森爺はゆっくりと
翼を広げた。
しっかりと点検する。

いける。

いや、行く。絶対に。

森爺は大悟を優しく
そっと掴むと
北の山に向かって
一直線に飛び始めた。