お願いね、と珍しく神妙に頼む姉の声を耳に残し、恭一郎は歩きだした。
今日は、いつもみたいに音楽を聴く気にはなれない。
代わりにもう一度携帯を開き、ふさ丸の画像を探してみた。
たった一枚だけだが、真正面の姿が残っていた。
故郷を出る朝に撮影したものだ。
小首を傾げて、こちらを見ている。
丸い目、三角の耳、濡れてピカピカの鼻、それら全てが真っ直ぐに恭一郎に愛と信頼を訴えかけていた。
歩きだした足が止まった。
「あれ?おかしいな、なんだよこれ」
いつの間にか泣いている自分に驚いたが、どうやっても恭一郎の涙は止まろうとはしなかった。
翌朝早く、故郷行きの電車を待ちながら、恭一郎は携帯を取り出した。
待ち受け画像はふさ丸にしてある。
しばらく見つめ、待ってろよと話しかけた。
「もしもし。姉ちゃん?今から帰るから」
「ごめんね、忙しいだろうけど。母さんがどうしてもって」
「うん。構わないよ、いつかは帰らなきゃって思ってたから。ふさ丸のおかげだ。あ、電車来た」
「気をつけて」
電車に揺られているうち、恭一郎は眠ってしまった。
ふさ丸の夢を見た。
まだ耳が垂れている子犬の頃だ。
今日は、いつもみたいに音楽を聴く気にはなれない。
代わりにもう一度携帯を開き、ふさ丸の画像を探してみた。
たった一枚だけだが、真正面の姿が残っていた。
故郷を出る朝に撮影したものだ。
小首を傾げて、こちらを見ている。
丸い目、三角の耳、濡れてピカピカの鼻、それら全てが真っ直ぐに恭一郎に愛と信頼を訴えかけていた。
歩きだした足が止まった。
「あれ?おかしいな、なんだよこれ」
いつの間にか泣いている自分に驚いたが、どうやっても恭一郎の涙は止まろうとはしなかった。
翌朝早く、故郷行きの電車を待ちながら、恭一郎は携帯を取り出した。
待ち受け画像はふさ丸にしてある。
しばらく見つめ、待ってろよと話しかけた。
「もしもし。姉ちゃん?今から帰るから」
「ごめんね、忙しいだろうけど。母さんがどうしてもって」
「うん。構わないよ、いつかは帰らなきゃって思ってたから。ふさ丸のおかげだ。あ、電車来た」
「気をつけて」
電車に揺られているうち、恭一郎は眠ってしまった。
ふさ丸の夢を見た。
まだ耳が垂れている子犬の頃だ。