「まっこと気の良い連中じゃな。先生、俺はな、事が成った後は
船で地球のありとあらゆる場所を巡りたい。
どうじゃ、一緒に来んか」

「もともと私は、遠い国から来たのです。何かのお役に立てるかも
しれません。喜んでお供しますよ」

「うむ。十兵衛殿が果たせなかった夢を俺が叶える。
約束だぞ、先生。」

翌朝、皆が名残惜しそうに見送る中、竜馬は旅支度を整えている。
「さぁて、ちと長旅じゃ」

自分に気合を入れる竜馬の前に、ふわりと白い布が舞った。
一反木綿である。
「先生、おいが坂本はんば、越前まで送るったい」

一反木綿は、一晩で竜馬に惚れこんでいたのだろう、
頑なに言い張った。
「判りました。坂本さん、薄い布にしか見えないでしょうが、
そいつは意外と力が強い。坂本さんを乗せて、越前に行くぐらい
朝飯前にやってのける。使ってやってくれませんか」

竜馬は快諾し、一反木綿に跨った。
「頼むよ、木綿殿」

「承知」
竜馬を乗せ、一反木綿はゆっくりと宙に浮かんだ。

「こりゃええ。ではまた会おう、皆、達者で」
緩やかに見えて、一反木綿は速い。
たちまちの内に、小さな点になった。
皆は、その点が見えなくなってもまだ、名残惜し気に見送っている。
こうして、竜馬には強い味方が出来た。
この出会いが後の彼の活躍を後押しするとは、
先生すら思いもよらない事であった。


十九へ