「高志。俺のバッグ
から携帯出してくれ。」
 
「あ、はい。
…これっすね。」
 
「すまん。」
 
優子の携帯は留守電
になっていた。
多分、病院の中だろう。
 
「雅人だ。この街を
離れる事になった。
猫の世話を頼む。
高志に預けるから。
それと、世話して
くれる礼も高志に
渡すから、目の
手術を受けてくれ。
じゃあな。
…目、見えるように
なるといいな。」
 
「高志。」
「はい!」
 
「控室に猫の籠が
ある。そいつを
持って早く帰れ。
猫の籠の中に、
通帳も入れてある。」
 
「でも雅人さん…」
 
「いいから早く行け。
俺のバッグはそこに
置いとけばいい。」
 
「はい…雅人さん、
死なないで
くださいっ!」
 
俺は高志の叫びを
背中に受けて
リングに向かった。
 
まぁいい。

最後は大好きな
リングで死ねる。

できれば最後に
優子の声が
聞きたかったな。
 
リングには既に
ロブが待っていた。
冷たい目だ。
人を殺す事など
なんとも思って
いない目だ。
 
 

ゴングが鳴った。