「あら、ご挨拶ね。久しぶりに逢った元・妻への
言葉とも思えないわ」
元・妻か。都合と機嫌の良いときにしか聞いたことの無い言葉だ。

「雅彦は元気か。ちゃんと野球は続けてるか」

「とっくに止めたわよ。キャッチボールは一人では出来ないの。
あの子、キャッチボールの相手はあなたに決めてるから」
相変わらず、切れ味の鋭いセリフが俺を袈裟切りに仕留めた。

「話ってのは何だ」

「ついてきて。現地で説明するわ」
玲子は当然のように俺の車に向かった。

「相変わらずこの車なの?いい加減、スープラなんて乗り換えたら?」

「女を乗り換えるようにはいかないんだよ」
バシッと後頭部を叩かれた。口よりも先に手が出る女だ。

「出来もしない事を偉そうに言うんじゃない。
そこを左。突き当たりの家」

小さな庭がある一軒家だ。
今どき珍しい縁側付きの家だった。
その縁側に年老いた男が一人、ぼんやりと座っている。
膝の上には三毛猫がいた。

「あの人の娘さんが依頼者。来て。こんにちは。前島です。」
返事と共に台所から現れた女性には、俺も見覚えがあった。
確か、玲子と同じ職場の看護師だ。

四へ