二分ぐらい固まっていたと思う。
「私です。麻理子です。待たせてごめんなさい。」

誰も待ってないって。返事しちゃ駄目だ。

「居るのわかってます、帰ってくるの見てたから」
ドンドンドン!ドアを叩く音が激しくなってきた。

「開けろ開けろ開けろ開けろ開けろ!」

対決するしかない、俺は勇気を振り絞って
ドアを開けた。

いた。麻理子だ。
白い服と紙袋を持っている。
紙袋の中から、人形の髪の毛だけが出ている。
物凄い匂いだ。

「どういうつもりや。おまえ、何がしたいねん!」

うつむいたまま話し出す麻理子。
「ごめんねなかなか来れなくてでももう大丈夫
あなたは気にしなくていいのよ」

「なに言うてんねや!誰がお前なんかに
来てくれって頼んだ!」

麻理子は、長い髪で隠れた顔を上げた。
「言うたやんけ。ステージで言うたやろが」

目がヤバイ。吊り上がり、血走った白目の
真ん中に異様に小さな瞳。

「と、とにかく帰れや。警察に電話するぞ。」

「ひどい。せっかく来たのに。ミーちゃんの
散歩も途中で止めてきたのに。」

「そ、そやったらミーちゃんの散歩に
行けや。寂しがってるで、きっと。」

その瞬間、麻理子は口だけで笑った。
「ミーちゃんは寂しくなんかないわ。
だっていつもこの中に居るもの。」

麻理子は紙袋を持ち上げて、そう言った。

何だ。何を出すつもりだ。