まだ午前4時。
辺りはまだ暗いのだが、台所で誰かが朝食を支度しているようだ。

あいつだ。
一瞬にして気が重くなった。
また、修羅場を演じなくてはならない。

あの夜出会わなければ、こんな事にはならなかった。

言い訳にしか過ぎないが、その時は、まさかこれほどしつこい女とは思わなかったのだ。
半ば、からかうつもりで相手したのだ。

「あ、おはよー。起こしちゃった?ごめんね」

とびっきりの笑顔を見せて振り向くが、見る度に印象が悪くなっていく。

そんな俺の気持ちにはお構い無しに、テーブルには次々と料理が並べられていく。

朝からこんなに食べられる筈が無いのだが、料理の腕が自慢なのか、品数は来る度に増えていく。
そのくせ、俺が一番好きな塩鮭は見当たらない。

やれやれだ。
今から始まる事を考えると、心底うんざりするが、ここに居させるわけにはいかない。

さて、始めるとするか。
「なあ」

「なあに」

「何度もさ、言ってるけどさ。来ないでくれないか」

「あら、そうはいかないわよ。あなたに満足してもらわなきゃ」

「いや、こんなに作られても食えないし」