「おっそろしい爺様だのう…」
剽げた風を装ってはいるが、大黒天の声に軽さが無い。
又佐は二番を投げ捨て、長持から更に一本取り出し、大黒天に駆け寄る。
老人とは思えぬ速さである。
とん、とん、と軽やかに後退る大黒天から苦痛の声が漏れた。
右足のつま先から小柄が生えている。つま先は床に縫いとめられていた。
又佐が投げつけたものだ。
動きを封じられ、うろたえる大黒天が、もう一度小槌を振るおうとした。
その小槌目掛け、又佐の槍が唸る。
大黒天は辛うじて小槌で受けた。
「は、この小槌、生なかの刀では切れぬわ。一度で学ばぬのか?」
だが、大黒天の嘲笑が驚愕に変わった。
又佐の振るった槍が、まるで豆腐を切るように小槌を縦に両断したのである。
勢い余って大黒天の右手を肘まで切り裂く。
「な、なんじゃその槍は」
見たところ、全く何の変哲も無い古びた槍なのだ。
「知らぬであろうな。これは、わしの一族に古くから伝わる槍。
もっとも、竿自体はわしが手に合うように作り変えたがの。
名をグングニルという。南蛮渡来の槍じゃ」
又佐が笑う。狸のような風貌が、より一層狸に近くなる。
九十四へ
剽げた風を装ってはいるが、大黒天の声に軽さが無い。
又佐は二番を投げ捨て、長持から更に一本取り出し、大黒天に駆け寄る。
老人とは思えぬ速さである。
とん、とん、と軽やかに後退る大黒天から苦痛の声が漏れた。
右足のつま先から小柄が生えている。つま先は床に縫いとめられていた。
又佐が投げつけたものだ。
動きを封じられ、うろたえる大黒天が、もう一度小槌を振るおうとした。
その小槌目掛け、又佐の槍が唸る。
大黒天は辛うじて小槌で受けた。
「は、この小槌、生なかの刀では切れぬわ。一度で学ばぬのか?」
だが、大黒天の嘲笑が驚愕に変わった。
又佐の振るった槍が、まるで豆腐を切るように小槌を縦に両断したのである。
勢い余って大黒天の右手を肘まで切り裂く。
「な、なんじゃその槍は」
見たところ、全く何の変哲も無い古びた槍なのだ。
「知らぬであろうな。これは、わしの一族に古くから伝わる槍。
もっとも、竿自体はわしが手に合うように作り変えたがの。
名をグングニルという。南蛮渡来の槍じゃ」
又佐が笑う。狸のような風貌が、より一層狸に近くなる。
九十四へ