こらえきれず、その場
でスタートを押す。

流れてきたのは、
久保田利伸の
MISSINGという曲
だった。

その途端、俺の目の
前に、一人の女性が
現れた。

その幻は、涙をこらえ
ながら、それでも
微笑んで俺を
見つめていた。

あぁ。そうだ。
この曲は俺と妻との
思い出の曲だ。

あの頃、二人とも違う
恋人がいたんだ。
それでも二人、惹かれ
あって、とうとうお互い
に結ばれてしまった。

曲が変わった。

シューベルトの子守唄。
その時、目の前に
現れた幻は、妊娠中の
妻だった。

胎教のためによく聴いて
いた曲だ。

次々に曲が変わり、
その都度俺の目の前
に優しく微笑む妻や
元気に笑う娘が
現れた。

全ての曲が終わった。

俺の目の前には、
心配そうにこちらを
見つめる妻と娘が
いた。


「…いいCDだ。
こんなの家に
あったかな。」

ニッコリと微笑んだ
妻が答えた。

「あたしが編集したの」

「ありがとう。」

「もう一度かける?」

「いや。もういい。
今聞きたいのは
このCDじゃない。
大好きな家族の
笑い声だ。」

もう一度、妻が
微笑んだ。
娘がひやかす前で
俺は妻にキスした。