結局、田上は夏の終わりに退院し、初雪の降る頃に
その人生を終えた。

毎日のように妻の作った雑煮を啜り、甚五郎の喉を撫で、
穏やかに息を引き取ったという。

葬儀の帰り道、泣きじゃくる澤田の後ろ頭を張り飛ばしながら、
春美もまた、静かに涙をこぼしていた。

「ええか、澤田。ケアマネにとって一番大事なことは何や。
言うてみよし」

鼻を啜りながら、澤田が言葉を選びながら答えた。
「顧客様の満足を提供する…」

「そんなん当たり前。ええか、ケアマネが最後まで考えなアカンのは、
その人の『らしさ』と『こだわり』や。
その為に『情』と『理』のバランスを考えるんや。
澤田。愛に満ちたヤジロベーになりや」

「はい」

「よし、判ったら私と一緒にあの夕陽まで走るで」
わははは、と笑いながら本当に走り出す春美であった。


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