源次は大会本部のテントに運び込まれ、直ちに
ドクターの手当てを受けた。
「軽い熱射病です。命に別状は無いが、これ以上の
競技の続行は無理でしょう」

芳美が安堵の顔で源次を慰めた。
「源さん、上出来だよ。残念だけど、次、頑張ろうよ」

源次は何も言わず、じっと上を見つめる。

大会役員が源次に話しかけてきた。
「岡村さん、大丈夫ですか?」

「あ、あぁ、すんません。迷惑をおかけしたようで」

「いや、御無事で良かった。で、申し訳ないんだが、
岡村さんとこのテルちゃん、呼び戻してくれませんか」

「え?!テル…?」
芳美も驚いた。そう言えば、ずっとテルの姿が見えない。

「そうなんですよ、テルちゃん、スタートラインから動こうと
しないんです」

芳美に肩を借り、源次は身を起こした。

「テル…」
厳しい夏の日差しの中で、テルがじっと待っている。
テルは、源次の一投を待っているのだ。
帰ってくると信じて待っている。

「テルッ!もう、いいんだ。いいから帰ってこい」
テルは源次の声に尻尾を振って応えた。
ディスクを咥え、源次をじっと見つめている。


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