『この男は、データを捏造して納豆を品切れに追い込んだ張本人である!ここに天誅として、納豆風呂の刑を与える!』

野次馬が続々と集まってくる。
彼らが目にした物は、肩まで納豆風呂に浸かった猪狩であった。

その額に、納豆関連株券がベッタリと貼られてあった。


「あなた、どこへ行ってらしたの?」

妻に声をかけられ、重雄は慌ててお多福の面を隠した。

「ちょっと…黄門様になってきた」

はぁ?と首をひねる妻に笑いかけ、重雄は食卓についた。

幸い、量産した納豆は幾つかの老人介護施設に納入が決まった。
ほとんど損害は発生せずに済んだ。
重雄の真面目な仕事ぶりを知る者からの援助があったのだ。

それでも、何グロスもの納豆が廃棄される事になった。

その全てを重雄は持ち出し、有効利用しただけであった。

いただきます、と丁寧に合掌し、自らの工場が作った納豆を手にする。

「うむ。やっぱり納豆は納豆だ。ダイエットなんかに使われてたまるか」
刻みネギと黄身をまぜ、少量の醤油を垂らし、ぐるぐるとかき混ぜる。

「二十分も待ってられるかってんだ」

重雄は、温かいご飯に混ぜて直ぐの納豆をかけた。

見るからに美味そうな納豆ご飯だが、重雄は決してお代わりはしない。

適度な食事と適切な運動こそが健康の秘訣と知っているからだった。