「もう一度だけ、雪が見たかったなぁ」
ベッドに横たわった里佳がぼんやりとつぶやく。

「見られるわけ無いけどね」

短く笑う。
病室の窓から見える空は夏の色だ。

返事に困った啓太は同じように空を見上げた。

入院中に知り合った里佳は、時々無茶を言っては啓太を困らせた。

啓太自身も入院している身の上だ。
できる事と、できない事がある。

啓太も里佳も癌に侵され、余命数ヶ月。二人ともそれは良く判っていた。

つまらない事ばかりの人生で、里佳はようやく出会えた最愛の人だ。

彼は、里佳の為なら何でもしてやりたいと願っていた。

だが、こればかりはどうしようも無い。
「真夏に雪か…無理だよなぁ」
知らないうちに、想いが言葉になっていた。

「真夏に雪ですか。できますよ」

突然、そう声をかけられ啓太は驚いて振り向いた。

「…あなたは?」

その男はニヤニヤと笑いながら名刺を差し出した。

「これは失礼。わたしは喪黒と申します。セールスマンです」

喪黒の説明を聞き、啓太は耳を疑った。
天候を自由自在に操る機械があるというのだ。二へ