「あは、あははは。良かった、麻理ちゃんが正気に戻った」

「え?あ…たし…もしかしてあんた、助けてくれたの?」
志郎が鼻血を出しながら、うんうんと頷く。

「ごめん。ごめんね。助けてくれてありがとう」

弱いくせに、この男は必死で私を助けてくれようとしている。
こんなに体を震わせながら、それでもベイに向かってくれた。
麻理が涙ぐみながら頭を下げた。
ならば自分も報いなければならない。
ゴスロリは、受けた恩義は必ず返すのだ。

「どうせ殴るなら、ベイ、おんどれを殴ったるわい!」
きりり、と立ち上がった麻理が拳を構えた。

「麻理ちゃんダメだ、無茶は止めて」

「大丈夫。あたし、気づいたのよ。あたしの拳は
絶対にあの馬鹿野郎に効く!」

どういった根拠があるのか、或いは単なる虚勢か、
麻理は自信タップリである。
その姿を見て、ベイが鼻で笑った。
「大層な自信だ。いいだろう、一発殴ってみるが良い。
ほれ、よく狙いをつけてな。ここだ、ここ」

突き出された頬に向け、麻理が渾身の力を込めて
拳を放った。

「ぐげぇぇぇぇっ!」
驚いたことに、ベイが絶叫をあげて吹っ飛んだ。
その頬が焼け爛れて煙をあげている。

「ふ。見たか、これぞ必殺・聖なる拳。
ゴスロリでホント良かったわ」

振り上げた麻理の拳で、指輪が燦然と輝く。
『十字架』の飾りが付いた指輪である。
吸血鬼であるベイにとって、その打撃は正に『神の裁き』であった。