「小糸、何で止めるんや、もっと聞かせてくれ。」

「若旦那、あきまへんわ。線香が立ち切れてます」

うぅん。やっぱり米朝はんの立ち切れ線香は、何度聴いても泣かせるなぁ。
手を休めずに熊が言う。

立ち切れ線香とは、米朝が得意とする人情噺である。
放蕩の過ぎた若旦那と、純情無垢な芸姑・小糸との悲しい恋の話だ。

仕置きの為、蔵に閉じ込められた若旦那がようやく小糸のもとを
訪ねると、彼女は既に病で亡くなっている。

遺影に手を合わせ、泣く若旦那の前で、小糸の愛用した三味線が
一人でに鳴り出す。それが線香が消えると同時に止んでしまう、という
噺だ。 熊はこの噺が大好きであった。

「店長ってば本当に落語好きですよねぇ…」
ケロロは半ば呆れている。

「あ?あぁ、ごめんね。せっかく手伝いに来てくれたのに辛気臭いよね」
熊は照れくさそうにターンテーブルに手を伸ばした。

二へ