雨が降ってきた。

真紀子は飲みかけのコーヒーを置き、慌ててベランダに出た。
愚図る娘を保育園に連れて行き、留守を任せる夫の為に
昼の弁当を作り、洗い物と掃除を終え、ようやく一息ついたところである。
夫は未だ起きてはこない。
残業続きの身の上だから、面と向って文句を言う事もできないのだが、
真紀子の胸には澱のように苛立ちが堪っていた。

空に向って文句を言っても仕方無いのだが、
愚痴の一つも零したくなるのは無理からぬことである。
取り込んだ洗濯物を畳みながらテレビを点ける。
ワイドショー番組では、相変わらず芸能人が
くっついたの離れたのを繰り返している。
すっかり冷めてしまったコーヒーを飲みながら、
見るとも無しに見ているうちに、たちまち九時になった。

「いけない」
再び慌てだす。
今日は高校の同窓会なのだ。
恐る恐る切り出した同窓会だが、夫はあっさり行くように勧めてくれた。
そればかりか娘の面倒を看るとまで言ってくれた。
どこまで本気か判らないが、いつも苦労させているからと
いうのが理由である。
集合が昼間、という事も幸いしたのかもしれない。
夫が珍しく見せた思いやりを真紀子は有り難く頂戴することにした。