第三章  偽家族


幸一は、思わず悲鳴をあげそうになり、慌てて口を押さえた。
アパートの前に見知らぬ男がいる。
辺りを見回し、隆司と麻美が待つ部屋に向かおうとしていた。
幸一は鞄を抱えて走った。
二人を守らねば、という考えしか浮かばない。
近づいて声をかけた。
「お、おじさんここで何してんの」

幸一の声にその男は、ひぃ、と小さな悲鳴をあげた。
「な、なんだ小僧。おまえこそこんなところで何をしている!
ここは俺の家だ」
男は樋口であった。彼が隠れ家として選んだのがこのアパートだったのだ。

幸一は焦った。どうしよう、どうしたらいい…
良い考えが浮かぶ前に樋口は幸一達が住む部屋のドアを開けた。

「おじさんだぁれ?」麻美の声がした。

「え…」樋口は戸惑っている。

今しか無い。幸一は男の前に土下座した。
「おじさん、ごめんなさい。おじさんの部屋を無断で使ってました。
そこに居るのは、ぼくの妹と弟です」

「おまえら子供だけで、なんで…」


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