警察の捜査は遅々と
して進まなかった。
一応、犯人と目される
男は目撃されていた。
似顔絵も描かれ、
捜査陣も夢に見る
ぐらい顔を熟知して
いたが、男の行方は
遥として知れなかった。

担当の一人、松田は
ラックにさえ会いに
来た。
元々が犬好きな松田
は、ヤクザも逃げると
いうその顔を
クシャクシャにして
ラックを撫でた。

「えらいな、お前は。
身を挺して主人を
守る。侍のようなやつ
だ。えらいぞ。しかし、
お前が話せたらなぁ…
あっという間に解決
なんだが。」

そうボヤく松田の鼻を
ラックは励ますように
舐めた。

老犬ボランティアの
家は、谷口の墓がある
寺の近所だった。
ラックは散歩の途中、
墓参りを欠かさな
かった。

墓の前でしばらく
首をかしげ、何事か
聴いているような
素振りで過ごす。
小さく、くぅん、と
鳴き、また散歩に
戻る。それがラックの
日課だった。