海坊主と別れ、街道を歩き始めたが、又佐が
黙り込んでいる。

「又佐、どうした。船酔いか?」

「…若、爺は一つ気になることを思い出しました」

「何だ、言ってみろ」

「さればでござる。あの者」
又佐は太郎丸を顎で指した。

「あの者が求めようとしている延命丸。
なにやら怪しげな者共が絡んでおると言いましたが…
その者達が崇め奉るのが、大黒天とか…」

「ふむ。奇しくも七福神が二人か…偶然とも思えぬな」

思案気な二人を急かすように、太郎丸が大声をあげて
手招いた。
「おーい、おじさん達ーっ!急げーっ!」

太郎丸に手を振り返しながら、十兵衛が又佐に言った。
「いずれにしても、まずは江戸屋敷だ。
久しぶりの江戸、どうやら只では済まぬようだな…
又佐、その長持、存分に役立つかもしれぬよ」

「はは、それでこそ持ち込んだ甲斐がありまする」

「はーやーくーっ!」

「ふふ、子供は待ったが効かぬのぅ」
いくら強くとも、十兵衛にとって太郎丸はまだまだ子供である。
すでに、十兵衛は太郎丸の致命的な弱点も見抜いていた。


二十九へ